|
10月からは好調だった輸出にブレーキがかかる。根底にあるのは金融不安。米金融機関の資金引き揚げで新興国が自国通貨安に陥り、輸入抑制の動きが広がった。日本の鋼材輸出は「新規商談が成立しない」(東京製鉄)異常事態だ。
先行きの最大不安要因は自動車の失速だ。鉄鋼メーカーはFXの鋼材価格を他用途より低く抑えてきた。他業界からは「自動車優遇」とうらやむ声が聞かれた。
その自動車各社も減産のアクセルを踏み込んだ。若者の車離れはガソリン価格が下がっても変わらず、軽自動車シフトが進めば1台当たりの鋼材消費は落ちるとみるのが自然。ゼネラル・モーターズ(GM)に至っては米国が救済できるのかどうかすら分からない。
鉄鋼メーカーは「中級・高級品の価格は需給だけでなく、商品価値や顧客への提案力を勘案して決まる」(新日本製鉄)と強調する。だが高い車や住宅が売れない時代がくれば、高級鋼材も多く売れないかも知れない。過去の成功体験にこだわっている余裕はない。
主要商品の取引価格で構成する日経商品指数(1970年平均=100)が急落している。国内景気と相関性の高い前年比騰落率は17種の昨年末値がマイナス25.1%と、アジア通貨危機に国内金融危機が追い打ちをかけた98―99年時の下落率も超えた。今後、鋼材などの値下がりは指数下落を加速する可能性がある。第1次石油危機後に記録した過去最大の下落率(29.4%)さえ上回りそうな気配だ。
月末値ベースで見た17種の前年同月比騰落率は2002年の景気拡大からプラス(前年より上昇)を維持。軽い日経225りとの観測さえ出た2回目の「踊り場」でも05年5月のプラス1.3%で踏みとどまった。しかし今回は米リーマン・ブラザースの経営破綻をきっかけに金融危機が実体経済に波及。8月末のプラス21.5%から急落が止まらず、10月末値で42種とともにマイナス(前年より下落)に転じた。
日経商品指数から外為を読む場合に水準は関係なく、勢い(騰落率)の変化を見る。内閣府が景気動向指数の先行指標に採用している42種も騰落率の変化で改善、悪化を判断する。17種の過去の推移を見るとアジア通貨危機に山一証券や北海道拓殖銀行の経営破綻が重なり、97年10月から99年いっぱい続いたマイナス局面で、下落率は99年1月に16.8%、42種も13.5%に達している。ただマイナス幅が縮小しても景況感は改善するため、この時は99年1月が底になり、IT(情報技術)バブル崩壊前の2000年1―2月には17種も水面上に顔を出した。
ところが今回の下降局面でまだ底は見えない。17種の昨年末値の前年同期比下落率(25.4%)は、プラザ合意後の円高不況に原油価格が1バレル10ドル以下に急落した局面の86年7月末値(マイナス27.6%)に迫る。第2次石油危機後の下落はピークの81年2月でもマイナス20.5%とそれほど深くなく、86年水準を超えると第1次石油危機の反動で急落した74年12月末値のマイナス29.4%が視野に入る。プラス20%を超す高水準からわずか4カ月でマイナス20%超へという変化の大きさといい、米国の住宅・証券化バブルの崩壊が招いた実体経済への影響が既に驚異的な大きさであることが日経商品指数の動きでも分かる。
昨年は原油価格が1月に初めて1バレル100ドルを突破してから7月の147ドル台まで急騰を続け、17種も7月の185台まで上昇した。原油や穀物価格が現状で下げ止まったとしても、日経商品指数は昨年前半との比較で夏まで下落率の拡大が続く公算が大きい。しかも自動車や家電向けの需要減少とアジア、中東の大型設備稼働が重なる石油化学製品や、これまでの原料高で高止まりしていた鋼板が鉄鉱石の値下がりとともに今後下落する可能性は高い。
主要商品の値下がりは消費者物価の落ち着きや企業コストの軽減につながる半面、景気変化を半年ほど先読みする商品市況のベクトルは下落率が縮小するまで上向かない。日本経済は7―9月期までマイナス成長が続くと予想する三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミストは「02年から輸出依存度を高めてしまった結果、海外変調に伴う量の減少と円高のダブルパンチが厳しい」と指摘する。個別商品ごとの振れはあったとしても、やはり商品価格は指数でならして見れば景気や経済構造の変化を如実に物語る。
国内最大の商品取引所である東京工業品取引所が来年5月に予定している取引の24時間化。これに異論を唱える声が天然ゴムRSS3号先物市場であがり始めている。
天然ゴムは上場品目の中で唯一、東工取の先物相場が国際指標になっている商品だ。
原油ではニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物相場、金ならばロンドンの自由金市場の金塊現物相場、非鉄はロンドン金属取引所(LME)の先渡し相場。海外で指標が形成され、東工取市場ではおおむねその流れを映した動きになる商品がほとんどの中、天然ゴムの存在は異彩を放つ。
東工取市場はゴム輸入業者が多数参加していた旧東京ゴム取引所市場の流れをくむ。ヘッジ(保険つなぎ)の場として国内現物筋の参加は多く、タイの現物取扱業者やシンガポールの仲介業者も積極的に取引する。最近は欧米のファンド筋の利用も目立つ。多様な市場参加者による取引が指標としての信頼を高めている。
ただ、ある商品先物取引会社は「その多様性が24時間化では逆にあだとなる」と指摘する。現在も東工取市場で運用を行う、特に欧米を中心とした海外の市場参加者による取引が今までのような東工取時間に集中するのではなく、散らばってしまう可能性があり、「市場が間延びすることで、指標性を保てなくなるかもしれない」と危惧する。もし、東工取が指標市場という魅力を失えば、ヘッジ玉は別の市場へ移ってゆく可能性も否定できない。
東工取の総売買高は2003年から07年までに46%減った。08年もさらなる減少が確実視される。12月1日から株式会社となった東工取にとって営利追求の観点から、来年以降これ以上の売買低迷は避けたいところだ。
10月の天然ゴムの売買枚数は東工取上場商品の中で金、金ミニに次ぐ。東工取にとって天然ゴム市場の参加者は無視できない存在感を持つ。そこから投げかけられた24時間取引化への疑問符に東工取がどのように答えてゆくのか。市場の注目が集まっている。
2008年産の新米価格が底堅く推移している。好天で7年ぶりの豊作水準となる一方で、生産コスト上昇を理由にした全国農業協同組合連合会(全農)の値上げが浸透。当初予想されたような値下がりは回避している。
「ほんの少しの価格引き上げが日本の稲作・水田を守ることにつながることをご理解いただきたく」――。全農は今夏、肥料や燃料などの価格上昇に理解を求めて卸業者などを回った。生産者への仮渡し金を引き上げたうえ、卸向けの価格は60キロ1000円前後引き上げた。代表的な銘柄米の新潟産コシヒカリの場合、前年より1200円高い60キロ1万7000円となった。量販店店頭でも新潟コシは5キロ2400―2500円台が中心で、乱売で急落した昨年のような1980円といった安値はみられない。
今年産の米価は下落が予想されていた。作付面積を前年より10万ヘクタール減らす目標に対し、実際の削減は約4万5000ヘクタールにとどまった。また作況指数は10月中旬時点で102の豊作。政府は需給対策として10万トン前後の備蓄米買い入れを決めた。34万トンを買い入れた昨年産のような値上がりを見越して、生産者には売り控えの動きもみられる。
さらに全農は公設のコメ価格センターへの上場を見送り続け、今年産の主食用米の指標価格が見えない状態だ。「顔の見える取引」を重視するとしているが、業界では「豊作基調で安値がつくのを避けるため」との見方が根強い。大手コメ卸会社の幹部は「現在の米価は作られた価格」と苦々しげに語る。
ただ景気の先行き不安が強まるなか、消費者の節約志向は強まっている。量販店は店頭で5キロ2000円以下にできる低価格米の調達を増やし、銘柄米の売れ行きは「新米の手当てが一巡した10月後半からペースダウンした」(卸会社)。JA全農にいがたは卸会社向けの販売基準価格を引き下げることを決めた。
|