おお引け


「コメ回帰」がいつまで続くかも微妙だ。総務省の家計調査による2人以上世帯のコメ購入数量は7月から3カ月続けて前年実績を下回っている。今年前半のコメ消費増はパンなど小麦製品の値上げという「敵失」によるもの。不透明な価格形成が続けば消費者や需要家の不信を招き、消費減というしっぺ返しを食う可能性は否定できない。 「原油価格の大幅な下落は新規油田開発への投資を減速させ、将来的な安定供給に懸念を引き起こす」。石油連盟の天坊昭彦会長が10月24日に出したコメントが、市場で話題を呼んだ。ちょうど、ニューヨーク原油先物相場が1バレル70ドルを割り込んだころだった。 新規に油田を開発する場合、外国為替、リグ(掘削装置)、生産機材、人件費などコストは1バレル60ドル程度かかるといわれている。これがオイルサンド(原油成分を含む砂岩)、オイルシェール(原油成分を含む岩石)になると80ドル程度にも膨らむという。ニューヨーク原油先物相場が60―80ドルの水準にないと新規開発の採算が合わなくなるという計算だ。 豊富な埋蔵量を誇る石油輸出国機構(OPEC)は、この採算ラインの下値である60ドルを特に重視する。埋蔵量世界一のサウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相はかつて、「60―70ドルがこれ以上は下がらない最低ライン」と言ってはばからなかった。つまり、OPECにとって60ドルが下値の限界であり、60ドル割れは緊急事態なのだ。 ところが、ニューヨーク原油先物相場は底値がまったく見えない状況。11日には終値で60ドルを下回り、1年8カ月ぶりの安値に落ち込んだ。 OPECは60ドルライン維持に懸命だ。11月から日量150万バレルの減産を実施。サウジアラビアは11月積みから欧米向け供給を10%以上削減、12月積みからは外国為替証拠金取引向けも5%前後減らす。減産効果を市場に早く浸透させたいとの思いからだ。 それでも60ドルを割るようなら、OPECが12月の総会で100万バレルの大規模追加減産に踏み切る可能性が高い。60ドル割れはOPECにとってそれほど深刻なのだ。 米欧の金融危機が深刻化して以降、貴金属の金は「安全資産」として再注目されてきた。価格が変動して元本割れとなるリスクがつきまとうため実際には安全資産とは言い切れないが、株や債券、原油など他の資産よりも投資家の「買い安心感」が強いことは事実。その背景には、金の通貨としての性質がある。 ニューヨークの金先物(期近)は5日終値が1トロイオンス741.3ドル。リーマン・ブラザーズが経営破綻した9月15日時点と比べて5%安の水準にとどる。一方、原油やトウモロコシ、銅といった他の国際商品をみると、同期間の下落率は30%を超えている。 米欧の金融危機で世界経済への不安が台頭し、株や債券と違って無価値にならない金の需要が高まったことが相場を下支えしている。ただ、無価値にならないという特徴は原油など他の商品にも共通する。そのなかで金が目立って底堅いのは、通貨としての性質から、景気後退局面でも価値の目減りが少ないとみられているためだ。 金本位制が崩壊して久しい現在でも、金は各国中央銀行の預金準備の一部を構成している。最大消費国インドなど発展途上国では、金融市場にアクセスする手段を持たない人々が「タンス預金のようなもの」(商社)として購入する事例が多い。宗教や国家の色彩を帯びていないこともあって、金は「無国籍通貨」とも呼ばれている。 一方、金以外の商品は通貨として需要されることはまれで、何かに使う目的で買われるケースが圧倒的に多い。例えばプラチナは需要の半分以上が自動車排ガス触媒向けだ。こうした商品は景気変動に需要が大きく左右されるため、現在のような景気後退局面では相場水準を大きく下げやすい。 欧米の経済不安は直ちに収まる気配はなく、ドルやユーロといった主要通貨への信認が揺らぐ状況もしばらく変わりそうにない。頼れる通貨がないゆえに、無国籍通貨としての金需要は根強い状況が当面は続き、相場を下支えすることになるだろう。 王子板紙やレンゴー、日本大昭和板紙など板紙各社が打ち出していた段ボール原紙の値上げが、メーカー側の要求通り10月から1キロ10円の引き上げで決着した。板紙各社の周到な準備で値上げを進めた結果だ。 段ボール原紙は、2001年に10円、03年に5円、06年に5円、07年に7円と、いずれもメーカー側が満額の値上げで押し切ってきた。王子、レンゴー、日本製紙本社グループの3グループでシェア7割を握る寡占体制が武器になった。 今回の10円は、01年以来の大幅な値上げ。メーカー各社が9月20日―10月1日出荷分からの引き上げに対し、打ち出しを従来より1カ月ほど早め、3カ月前から値上げ要請を開始した。「原紙値上げが満額通ることを前提に、段ボールメーカーがその先のユーザーに価格転嫁する準備を進めて欲しいとの狙いがあった」と大手板紙メーカー幹部は語る。 従来より1カ月間ながくなった交渉期間を使って、板紙各社が力を注いだのが飲料や食品メーカーなど大口需要家向けの交渉だ。これまでの値上げでは、まず中小企業が多い段ボール専業メーカー向けの交渉を先行し、その決着によって大勢を固めてから大口需要家の交渉に入るのが通例だった。今回は、段ボール専業メーカーから「大口需要家向けも、段ボール専業メーカー向けも同時に決着するのが筋」との声が強まり、板紙メーカーも大口需要家向けの交渉に本腰を入れざるを得なくなった。 交渉の難航が予想された大口需要家も、飲料メーカーなどが9月中に値上げを受け入れ、満額浸透の流れができた。「値上げ幅の圧縮を狙って、何度も交渉を重ねたが、板紙メーカーが10円の引き上げで一歩も引かず、受け入れなければ安定供給に支障が出てきかねないと判断した」と大手食品メーカーの購買担当者は話す。 値上げが決着したばかりの段ボール原紙だが、今後、価格が維持される保証はない。価格引き上げの主因となった古紙価格が弱含んでいるうえ、原油価格も下落しているためだ。古紙はここ数年、中国向けの輸出増加で、価格も急上昇していたが、10月に入り、世界的な景気減速による需要減で現地価格が急落している。段ボール古紙の輸出価格はすでに国内価格を下回っており、今後、国内価格が引き下げられる可能性がある。 需要家側は「値上げの根拠である古紙や重油価格が変化すれば、値下げ要求することもありうる」(大手飲料メーカー)との姿勢だ。古紙価格が大きく下がれば、段ボール原紙についても値下げ圧力が高まるだろう。 原油と穀物の国際価格が急反落している。ニューヨーク原油先物市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油価格は7月に過去最高値の1バレル147ドル台を付けたが、3カ月余りで半値以下になった。シカゴ先物市場の小麦と大豆もそれぞれ今年2月と7月に付けた過去最高値の半値以下だ。 相場が過去最高値まで上昇した理由としてファンドなどの投機資金の商品市場への流入がある。世界的な低金利と金余りで株や債券などの金融市場で運用されていた投資資金がより高い利回りを求めて商品市場に流れ込んだ。 市場推計では世界の原油先物市場の規模は10兆円強。株や債券に比べて100分の1以下だ。金融市場からの資金流入で商品価格は急騰。それが値動きに追随して買い注文を入れるシステム取引の買いを誘ったと指摘されている。 反落のきっかけは、米政府が商品への投機的な売買への監視と規制を強化する方針を打ち出したこと。ファンドの持ち高の制限や報告義務の強化などが主な内容だ。 規制強化を嫌って資金の流入が細ると商品相場は急速に高値を修正した。さらに9月15日に米大手証券のリーマン・ブラザーズの経営が破綻。米国で金融危機が深刻化する。商品高騰の主役だった投資銀行は経営危機に陥り、換金のため商品市場から一斉に資金を引き揚げた。それが10月以降の商品相場の急落に拍車をかけた。 商品市場では金融危機が世界的な景気減速につながり実需の足を引っ張るのは確実との見方が増えている。当面、商品相場は下値を探る可能性が高そうだ。 中国の実体経済の停滞は、多くの産業分野の取引現場で大きな影響をもたらし始めた。自動車や家電、日用雑貨まで幅広い用途がある石油化学の市場も例外ではない。