お化粧買い


「来年2月の旧正月明けまでは回復しないかもしれない」。大手商社の中間原料の輸出担当者はこうため息を漏らす。今年の6月ころからから中国の需要が急速に落ち込み始め、4カ月がたった現在でも「回復の兆しがまったく見えない」というのだ。 原因は大きく2つある。まずは、今夏の北京五輪に向け前倒しで膨らんだ需要のトラック買取が現れたことだ。道路のアスファルトの下にポリスチレンを敷くなど、インフラ絡みの需要も大きかった。個人消費も同様に五輪前に息切れしたようだ。 さらに大きな要因は米国を始め、世界景気の悪化だ。「世界の工場」と呼ばれる中国の生産活動は、当然、米国や欧州、日本などの景気の影響を受ける。特に昨年からの米景気の失速が効いている。現在の金融危機の広がりを見れば、当面は景気浮揚は望めそうにない。 実際、9―10月は米国のセミナー商戦向けに石化製品などの素材の需要が高まる時期。11月に船積みして商戦に間に合わせるためだ。だが、玩具に使う塩化ビニール樹脂なども「ほとんど引き合いがない」(大手商社)状態だ。 最近の原油安で石化製品の価格は大きく値下がりしている。例えば、包装用フィルムなどに使うポリプロピレン樹脂の東監視カメラ地区の価格は現在、1トン1330ドル(中心値)とピーク時の7月に比べ35%も安い。他の製品価格も同様の傾向を示す。 安い時に在庫を積み増し、上昇したら売って利ザヤを稼ぐトレーダーが活発に買いを入れてもいい価格水準だが、動きはない。 中国の変調が長引けば、日本の化学メーカーにも影響が及ぶ。一段の減産を迫られたり、輸出価格の下落で採算が悪化したりする可能性がある。今まで以上に中国経済の動向を注視する必要がありそうだ。 鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶばら積み船運賃の国際指標、バルチック海運指数(BDI、1985年平均=1000)が急落している。8日現在で前日比158ポイント(5.4%)下がり2764。これは2006年6月以来2年4カ月ぶりの低水準で、今年5月の高値に比べ8割弱も下がった。これまでばら積み船市況をけん引していた中国など新興国向け輸送需要が停滞していることが響いている。 米国向けのコンテナ船輸送は、昨年末からすでに失速していたが、その後も新興国向けの荷動きはばら積み船主体に堅調を持続。外航海運全体でみると、新興国向け需要の拡大が不動産不況に苦しむ米国向け失速を補う「デカップリング(非連動)」の包茎が成り立っていた。 ところが8月以降、新興国(中国)への鉄鉱石の荷動きに急ブレーキが掛かり、外航海運におけるデカップリング論は力を失った。 海運業界全体の粗大ゴミはすでに楽観から悲観に変わっている――。こう感じさせるのは、船主の建造・購入意欲が鈍化していること。世界的な脱毛を当て込んだ建造・購入ラッシュが続いていたが、明らかに勢いがなくなってきた。 鉄鉱石などを運ぶケープ型(15万トン級)を例にとると、新造船の単価は今年8月には1隻9850万ドルの史上最高値を付けていたが、現在は約3%安い9600万ドル程度に下がった。中古船の売買価格に至っては、1億3400万ドル程度と8月に比べ14%下落。新造船、中古船とも02年後半から続いた上げ基調は完全に一服した。 ばら積み船では米国発の金融危機が下げを増幅させている面もある。運賃先物市場に入っていた投機資金が流出し、バルチック海運指数の下落を加速させた。 この数年の外航海運市況の高騰局面では、明らかに投機的要素が相場を押し上げていたが、すでにこれまでの急落でこうした部分はほとんどはげ落ちたとみられる。今後の海運市況は需給をベースに適正水準を探る展開となりそうだ。 人材派遣や人材紹介の市場で家電製品などの設計・開発を行う技術者の求人が堅調を維持している。景気悪化を背景に幅広い分野で採用抑制がじわじわと広がるなかで、唯一気を吐いている形だ。派遣料金をみても独歩高の様相だ。 技術者派遣最大手のメイテックによると、同社の派遣技術者の稼働率(実際に派遣先で就業している人の割合)は8月現在、95.9%(関連2社分含む)と前月比0.8ポイント上昇。上昇は4カ月連続で、ほぼフル稼働状況が続いている。 景気悪化の影響で製造業の間では生産調整に伴ってライン工などは削減される傾向となっている。だが、「将来の商品戦略のカギとなる設計開発部門は手厚く人材配置するところが大半」(メイテック)という。 スタッフサービス(東京・千代田)では派遣スタッフとなる技術者の採用拡大を目指して10月1日から専用の採用サイトを大幅刷新。技術分野や勤務地などで従来より検索しやすくした。同社では約4000件の求人案件が寄せられているが、「人材確保が追いつかず2―3割程度しか対応できていない」(スタッフサービス)という。 企業へ請求する派遣料金も設計開発技術者の場合、首都圏で1時間当たり3000―5000円程度と1年前と比べて3―5%程度上昇。一般事務職の時給が2100―2500円程度で伸び悩んでいるのに対して、高水準が際立つ。 人材紹介最大手のリクルートエージェント(東京・千代田)に寄せられた8月末の中途採用求人数は全業種で前年同月末比11.7%減の8万3406人と2カ月連続で前年を下回ったが、技術者を中心とする「電気・電子・半導体・機械」向けでは2万5638人と0.9%増となった。「金融」や「建設・不動産」向けが3割強の大幅減となったのと対照的だ。 派遣や中途採用での技術者の求人が堅調なのは、学生の理系離れを背景に新卒採用が難しくなっていることがある。また、家電メーカーなどの間では少量多品種生産や新製品開発サイクルの短期化で、設計開発部門の業務が増大。薄型テレビの分野では今年に入ってソニーなどが生産を一部台湾へシフトするなど、低価格化戦略を打ち出した。だが、設計部門は国内が中心。開発は国内、製造は海外でといったケースが広がっていることも国内での技術者の需要を支えている。 不況でも売れる商品の条件は何か。安いこと。そして、消費者の物欲を刺激する何かを備えていること。その“何か”を生み出すためにも若い感性を持った技術者を多く抱えておきたい。まずはヒトから。そんなメーカーの思惑が、技術者の求人の根強さの背景に透けて見える。 鋼材が大幅値上がりするなど資材高騰が建設業界全体に重くのしかかっている。今春、激しい販売競争で値上がりしないと言われたセメントも大幅に上昇した。 こうした現状を受けて、国土交通省は6月に「単品スライド条項」の発動を決めた。国が発注する公共工事で鋼材などの資材価格が見積もり段階よりも大幅に上昇した場合、建設業者が工事代金にコスト上昇分の一部を上乗せできる仕組みだ。だが「単品スライドの実質的な効果は薄い」とゼネコンの資材担当者は漏らす。 単品スライドは、資材の値上がり分が総工事費に占める割合が1%を超えた場合に、超えた分を国が補てんする制度。仮に総工費100億円のプロジェクトならば、資材の値上がり分だけで1億円を超えた分のみが適用範囲になる。このため単品スライドを適用しても「実際に補助の対象となる金額は少なく、ゼネコンの負担は軽減されない」という見方が大半を占める。 それでもゼネコンが単品スライドを歓迎するのは、公共工事価格に資材高を転嫁することを国が認めたことで、「民間工事でも施主に価格転嫁を求める道が開けた」ためだ。これまで民間工事は公共工事以上に施主への価格転嫁は難しいと考えられてきた。だが今年9月、大手ゼネコン各社は着工済み物件への原燃料高転嫁を求めて施主と交渉を開始した。